タグ: 相続のきっかけ

  • 我が家の相続が動き出したきっかけ

    「うちの相続」は、もう20年前から始まっていた

    振り返ると、我が家の相続は、ずっと前から静かに動き出していたのだと思います。きっかけはひとつではありません。20年以上かけて少しずつ積み上がってきたものが、ある日、はっきりと自分ごとになった——そんな感覚です。

    今日は、私がなぜこのブログを書こうと思ったのか、その「始まりの時間」を残しておきます。

    父に病気が見つかった日

    両親と相続の話をきちんとするようになったのは、5年ほど前からです。きっかけは重いものでした。父の身体に、がんが見つかったのです。

    幸い、ほかへの転移は見つかりませんでした。それでも、母も私も「そろそろ覚悟しておかないといけない」と悟りました。父も、自分の身体のことを誰よりも分かっていたのだと思います。ありがたいことに、父は今も元気に暮らしています。けれど、あの時に感じた「いつかは必ず来る」という感覚は、今もずっと胸の奥に残っています。

    このブログでよく書いていることですが——相続は、亡くなってから始まるものではありません。元気なうちから、もう始まっている。それを頭ではなく、身体で理解したのが、この時でした。

    税理士さんから告げられた、資産の額

    病気が見つかってから1年ほど経った冬のことです。ちょうど確定申告の時期で、父が昔からお世話になっている税理士さんがいました。その方と相談する機会があり、そこで改めて「相続税がこれくらいかかる」という話になりました。

    蓋を開けてみて、正直、ものすごく驚きました。

    父はお酒の席で「俺はこれくらい持っているぞ」と、いつも高らかに自慢していました。私はそれを何度も聞かされていたのですが、どこか半信半疑でした。だって、その証拠を見たことがなかったからです。本当のところ、どこに、何が、どれだけあるのか——子どもである私は、ほとんど把握できていませんでした。

    その日、税理士さんから具体的な資産額を示されて、ようやく現実が見えました。資産は、億の単位。そして、それにかかる相続税も、私が想像していたよりはるかに大きな金額でした。

    「相続税は、いくらから?」を、自分ごととして調べ直した

    この一件で、私は初めて相続税を真剣に調べ始めました。まず知ったのは、相続税には基礎控除という「ここまでは課税されない枠」があることです。

    基礎控除の額は、3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)で計算します(出典:国税庁)。財産の総額がこの枠を超えると、超えた部分に相続税がかかってきます。

    そして、もうひとつ重いのが期限です。相続税は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に申告・納付しなければなりません(出典:国税庁)。悲しみに暮れている間にも、時間は容赦なく進んでいく——そう気づいて、背筋が伸びました。

    いちばん怖かったのは、私が「真に受けていなかった」ことだった

    金額の大きさももちろん驚きでしたが、あとから振り返って私がいちばん怖いと感じたのは、別のところでした。それは、資産があること自体は知っていたのに、私がそれを本気で受け止めていなかったということです。

    父はお酒の席で「これくらい持っている」と何度も言っていました。だから「ある」ことは、頭では知っていたのです。でも、どこか口だけの自慢として聞き流していて、本当にその資産が動いている、実在している——という事実を、自分のものとして持てていませんでした。証拠を見たわけでもないし、自分ごととして調べたこともなかったからです。

    幸い、父は今も健在です。その時はまだ来ていません。でも、だからこそ怖いとも言えます。もし今の私のように、資産を「口だけのもの」と聞き流したまま、何の準備もなく急にその時が来ていたら——私は「何が、どこにあるのか」も分からず、口だけだと思っていたものを突きつけられて、途方に暮れていたはずです。

    しかも、その時が来てしまえば、相続税の申告まで10か月しかありません。悲しみの中で、たった10か月で財産を洗い出し、評価し、申告し、納税する——それを慌ててやろうとすれば、まず間違いなく破綻します。だからこそ私は、いざその10か月が始まったときに、万全の状態でやり切れるように、今のうちから準備しておきたいと思うようになりました。元気な今なら、父に直接聞けるし、一緒に整理できる。この「手前の時間」がどれだけ貴重か、私はこの時にようやく分かったのだと思います。

    だから、私は本格的に動き始めた

    父の病気が私に突きつけたのは、結局このことでした。相続は、元気なうちから始まっている。そして、受け取る側が「知らない」ままでは、何も準備できない。

    この気づきが、私が相続と本気で向き合うようになった、本当のきっかけです。それからは、父が信頼している税理士さんとも、何度も時間をとって話をするようになりました。資産の全体像、相続税の見通し、これから何を準備しておくべきか——一度では到底飲み込めず、回を重ねて少しずつ理解していきました。税理士さんとの付き合い方、親とのお金の話の切り出し方、土地をどうするか——やることは山のようにあります。でも、慌ててからでは間に合わないことばかりだと、もう分かっています。

    これから、その一つひとつを、当事者の目線でリアルタイムに記録していきます。次回は、「親が元気なうちに、お金の話をどう切り出したか」について書いてみようと思います。同じように「うちもそろそろかも」と感じている方の、ほんの一歩のきっかけになれば嬉しいです。

    このブログを始めた経緯は、はじめましての記事にもまとめています。あわせて読んでいただけると嬉しいです。くわしい自己紹介はプロフィール(/about)に書いています。


    【免責事項】
    本記事は私個人の体験と所感の記録です。個別の税務・法務判断は税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。税制・制度は記事公開時点のもので、現在は変更されている可能性があります。